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トピックス:贈与税・相続時精算課税制度の改正

贈与税・相続時精算課税制度の改正について

【1】改正の背景

贈与に関する税制には、暦年課税のほか「相続時精算課税制度」という制度があります。
現在の税制では、贈与税は相続税よりも高い税率のため、生前贈与への制約ともなっており改正により高齢世代に集中している資産を早いタイミングで若年世代に移転しやすくすることで、経済の活性化を期待する狙いがあります。
他方、資産の移転方法やその金額にかかわらず、税負担が変わらない税制「相続・贈与の一体課税」を構築していく必要があります。
こうした背景から 令和5年度税制改正により、一部改正となりました。

【2】改正内容

  • 【改正1】年間110万円の基礎控除を創設

    新しい相続時精算課税制度では、現行制度の累計2500万円の特別控除とは別に、新たに年間110万円までの基礎控除が認められます。
    そのため、年間110万円までの贈与であれば申告不要で贈与税がかかりませんし、相続財産に加算されないので相続税もかかりません。

  • 【改正2】被災した不動産は再計算が可能に

    相続時精算課税で贈与を受けた財産を相続財産に加算する際、これまでは贈与時点の価額で固定されていました。しかし改正により、贈与を受けた土地・建物が、災害により一定以上の被害を受けた場合、相続時にその課税価格を再計算できるようになりました。

【3】改正後の贈与税・相続税の計算について

  • 1.贈与税の計算方法

    相続時精算課税を選択(※1)した受贈者は特定贈与者(※2)ごとに1年間に贈与により取得した財産の価格の合計額から、【改正1】基礎控除額110万円を控除(※3)し、特別控除(累計2500万円)の適用がある場合はその金額を控除した残額に、20%の税率を乗じて贈与税額を計算します。

    • ※1 相続時精算課税は、原則として、①贈与者が贈与の年の1月1日において60歳以上であり、②受贈者が同日において18歳以上で、かつ贈与時において贈与者の直系卑属である推定相続人又は孫である場合に選択することができます。
    • ※2 特定贈与者とは相続時精算課税の選択に係る贈与者をいい、令和5年分以前の贈与税の申告において相続時精算課税を選択した場合も含みます。
    • ※3 同一年中に、2人以上の特定贈与者からの贈与により財産を取得した場合の基礎控除額110万円は、特定贈与者ごとの贈与税の課税価格で按分します。
  • 2.贈与税の申告手続き

    贈与の都度申告が必要ですが、年間110万円までの贈与は申告不要となります。

  • 3.贈与者がお亡くなりになられた場合

    相続時精算課税を選択した受贈者は特定贈与者から取得した贈与財産の贈与時の価額(【改正2】の適用がある場合には、【改正2】の再計算後の価額)から、基礎控除額を控除した残額を、その特定贈与者の相続財産に加算して、相続税を計算します。
    すでに支払った贈与税がある場合にはその贈与税を精算して差額の相続税を納めます。

【4】適用時期

【改正1】年間110万円の基礎控除は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税または贈与税について適用されます。

【改正2】被災不動産の再計算は、令和6年1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用されます。

【5】相続時精算課税制度を選択する場合の注意点

相続時精算課税を選択すると、暦年課税制度に戻ることができません。


暦年課税制度は年間110万円までの贈与であれば贈与税がかからない制度です。
被相続人の相続開始前3年以内に行なった贈与財産は、相続財産に加算した上で相続税の課税対象となりますが、令和5年度税制改正により、相続財産への加算期間が相続開始前3年から7年に延長されました。但し、延長された4年間に受けた贈与のうち、総額100万円までは相続財産に加算されません。

令和6年以降は相続開始のタイミング、贈与財産の種類価格などを考慮した上で、暦年課税と相続時精算課税のどちらの制度を利用して生前贈与するべきかを検討する必要があります。

  • 島田会計Staff Profile
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