近年、スマートフォンの普及により手軽に投資が始められる環境になったことや、物価上昇や社会保障制度の不透明さ等の将来的な不安から、資産形成の手段として株式投資を始めた方も多く、その中でも利益に対していくら税金が発生するのか、そもそも確定申告をする必要があるのか、気になる方も多いかと思います。
来たる確定申告の時期に向け、今回は上場株式等に係る税金について記述いたします。
まず上場株式等の利益には、株式を売買することによって得られる「譲渡益」と株式を保有していることで得られる「配当金」の二種類があります。
(1)確定申告が必要な方
・「一般口座」や「源泉徴収なしの特定口座」で取引を行い、利益が出ている方
・損益通算(同じ年に発生した利益と損失を相殺できる制度)や繰越控除(損益通算をし、損失が利益を上回ったことにより、その残った損失を翌年以降最大3年間にわたり繰り越せる制度)を適用したい方
ただし“給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を下回る”場合等、一定の条件を満たすときは申告が不要になる場合もあります。
また、「源泉徴収ありの特定口座」で取引を行っていた場合には自動的に源泉徴収が行われているため、原則として申告は不要となります。同様に、投資ブームの火付け役となった“NISA口座”での取引も非課税となります。
(2)譲渡益に対する税率
譲渡益に関しては他の所得とは通算せず、分離して税額計算を行う「申告分離課税」にて算出され、税率は所得に関わらず一律、所得税15.315%と住民税5%を合わせた20.315%となります。
(1)確定申告が必要な方
配当金に関しては、特定口座・一般口座に関わらず、配当金が支払われる際に自動的に源泉徴収されているため、基本的には確定申告は不要となります。(申告不要制度といいます。)
しかし、大口株主として配当金を受け取る場合等の一定の条件下にある方や、確定申告を行うことにより所得税の還付を受けられる等、税制の優遇を受けたい方は申告をする必要があります。申告する場合には、譲渡益で挙げた「申告分離課税」の他に、「総合課税」を選択することもでき、どちらで申告する方が有利かは課税所得によって変わってくるため注意が必要です。
また、前述した【上場株式等の譲渡】で損益通算を行う場合には、配当に関しても申告分離課税で申告する必要があります。
(2)配当所得に関する税率
a.総合課税の場合
・給与所得や一時所得など、配当所得以外の所得と合算
・所得が増えるほど税率も高くなる累進課税方式(5%~45%)
・税額控除の適用が可能
b.申告分離課税の場合
・配当所得以外の所得とは分離して計算
・所得に関わらず一律、所得税15.315%と住民税5%を合わせた20.315%
以上となります。
来たる令和7年度の確定申告に向け、まずは利益がいくら出たか、それによって確定申告が必要なのかを判断し、申告漏れのないようにしましょう。
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